大滝と大滝不動尊


甲府盆地と南アルプス

すすきがなびく赤松の尾根をダウンアップした棚横手山。南に富士、東にはハマイバマルから大谷ヶ丸、何時もと違った柔らかい姿を見せる滝子山へ南小金沢連嶺が連なる。笹子トンネルの上に位置するお坊山、笹子雁が腹摺山の尖った山容が顕著。穏やかな陽射しを受けて賑やかに昼食。久振りに同道した俳句を嗜むAさんに請って一句。「車座になりて昼餉や山眠る」。解説によると、この句の季語は「山眠る」。因に春の山は「山笑う」、夏は「山滴る」、秋は「山装う」とのこと。趣ある言葉、俳句を楽しむ余裕を持ちたいものです。俳句も写真も省略の美学。如何に切り取るかが神髄。当方の写真は未だ未熟で欲張り。精進、精進。何はともあれ暫し癒しの一時。セピア色の花殻がシックなオケラ、ピンクの羽毛が柔らかいコウヤボウキの連なる尾根を南下。数年前の山火事の焼け焦げた株も残る甲州高尾山から急斜面を下り、大善寺をはずした尾根で道無き道を駆け下り、ぶどう畑の脇から何とか車道に飛び出す。フルーツロードを駅に向かうと黒金山に紛れていた乾徳山も頂きを現し、茜色の大きな夕陽があっという間に南アルプスに沈む。夕靄たなびく勝沼ぶどう郷駅でワインを土産に帰宅。ちょうど1０年前の９６年の晩秋、妻と初めて参加した松が谷の山行が甲州高尾山。大善寺から道無き道を登り、低山ではあるが厳しい登り、今山行の登山口である大滝不動尊から林道を下ったことが記憶に残る。花も樹木も何も分からなかったが、その後皆さんにご教授いただいた。個性ある熟年仲間と今後も楽しく山を自然を楽しみたい。今年は幸い過去最多の３０回の山登りを楽しんだ。とりわけ快調であった健康、支えてくれた妻や山仲間に感謝。

秋から冬に懸けての山行の魅力は草花は咲いていないが、澄み渡った眺望。今回の山行のテーマは秀麗富士。漸く冬型の気圧配置となり晴天予報の師走最初の週末、冬晴れの富士を求めて精進湖の北に位置する三方分山を選ぶ。未だ星も瞬く未明、河口湖ＩＣから１３９号線を西南に進むと、外気も零下となり車のがラスが曇る。山登りの前に、湖面に映る夜明けの風景を求め、未だ訪れたことのない富士山の西に位置する田貫湖まで足を延す。始めてのルートは心地よい緊張。久振りに三脚を持って湖畔に向かう。富士山は青い優雅なシルエットを広げ、南の裾の辺りが赤い。岸辺には葦がなびき、湖面には水鳥が泳ぎ、さざ波が美しい波紋を広げる。中々陽は昇らない。やがて山頂付近が陽射しを受けて輝き始める。突然陽が昇る。オレンジの朝日が輝く。夢中でシャッターを切る。やがて辺りは白みはじめる。ほんの一瞬のドラマ。その後、車で北に移動し、本栖湖畔の周遊道路から再び現れた太陽を撮影。ダイヤモンド富士、輝く光のパワーが素晴らしい。この時期は竜ヶ岳辺りがダイヤモンドのポイントの様だ。一瞬の日の出を過ぎると、再度、陽射しはどんどん明るく白くなる。精進湖湖畔の県営無料駐車場に車を停め、辿る三方分山の山並が北の青空に連なる湖畔で、朝日に煌めく湖面を眺めながら朝食。登山口から落ち葉を踏み締めながらクヌギやリョウブ等の雑木林を登り、約１時間でパノラマ台に到着。逆光で日陰の富士山がゆったりと広がり、足和田山、西湖、河口湖の先に三つ峠山、杓子山、御正体山が浮かび、精進湖の先には松が谷の仲間と訪れた十二ガ岳、尖った頂きの鬼ガ岳が連なり、目的の頂きが平たい三方分山が構える。西には本栖湖の先に竜ヶ岳、毛無山も見える大パノラマが広がる。雄大に広がる風景を眺めながらコーヒーを喫する。微風が心地よく、コーヒーが旨い。

たっぷりと休憩後、アセビが緑のアクセントを付け、ブナが枝を広げる尾根をアップダウンを繰り返しながら北に進むと冠雪の南アルプスが浮かぶ。精進峠から富士山を振り返りながら急斜面をゆっくり登る。小さな笹が茂る落葉松林、緩やかな鞍部を進むと数人の登山者が休むなだらかな山頂に至る。展望は切り開かれた南側のみ。陽射しを反射する精進湖の先に広がる富士山、日溜まりでゆっくりと昼食。後は女坂峠から駐車場までの下りだけなのでゆったりと山を堪能することとし、久振りに斜面で富士山に向かってお昼寝。陽射しが暖かい。暫し夢の一時。憧れの富士山と連れ添った一日であった。

6：25　自宅発⇒7：05　立川発ＪＲ⇒8：23　 奥多摩着8：30　バス⇒9：00　日原登山口→9：50　稲村岩→11：50　鷹ノ巣山　昼食　12：30　下山開始→13：00　水根沢分岐→14：50　奥多摩湖下山　バス⇒15：26　奥多摩発⇒16：29　立川着⇒17：10　帰宅


稲村岩尾根


大岳山、御前山に向かって石尾根を下る


水根沢の晩秋


榧ノ木尾根を背景に輝くカエデ

立冬も過ぎた晩秋の未明、高尾から大垂水峠を越えて甲州街道を西進すると陽も昇り、見事な青空が広がる。最近、ご無沙汰している秀麗富士が期待できる絶好の天気。秋山の里山・阿夫利山の予定を変更して大室山へ登ることとし、藤野から青根へ抜け、神ノ川登山口へ向かう。北斜面で将に名前の通り陽の当たらない日陰沢、早朝の冷気が漂い手袋を着ける。せせらぎをBGMに沢縁りを進むと、突然現れた鹿を驚かせた様で、白い尻を振りながら走り去る。ガラ場の急斜面を登り朝日に輝く犬越路の峠に飛び出る。ここからは未だ富士山は望めない。春にコイワサクラを訪ねた檜洞丸のツツジ尾根の落葉した木の枝が逆光に透けて美しく連なる。小休止後、西にカエデの紅葉も残る急斜面を登りきると青空に映える冠雪の富士山が優しく迎えてくれる。手前には菰釣山、石割山の冬枯れの繊細なベージュの山並みと深く落ち込む麓の紅葉が美しい。裾の東には愛鷹山の二つのピークが優雅な山容を見せる。既に落葉したクヌギやリョウブの尾根道、高度を上げていくとどっしりとした大室山の山頂付近が姿を現す。中腹の陽溜りで南に構える富士山、東方のブナの枝越しに丹沢の主峰･蛭が岳を眺めながらコーヒータイム。例年、この時期は来年の年賀状のデザインなどを考えながら登る。長年、干支をテーマに手彫りの版画からパソコンデザインに移行したが、手作りの味わいを大事にしてきた。幸い数年に一度は気にいったデザインが浮かぶが、妻の干支である来年の猪のデザインは難しい。頭の中に朧に見えるイメージがうまくまとまればよいが。ゆっくりと高度を上げていくと、西に連なる加入道山が柔らかく美しい。鞍部に辿り着くと北に奥秩父の山並みが青空に浮かび、道志の谷が見下ろされる。梢の間から奥多摩の大岳山が見え、手前に伏せる阿夫利山に不問を詫びる。誰もいない静かな山頂。何時もの記念の小石を土産に戻る既に落葉したブナ林、広がる根元に実がたくさん落ちている。殻と果実の造形が美しい。展望の効く分岐まで戻るが、残念ながら富士山は雲が湧き出した。遠く西空に浮かぶ南アルプスの冠雪の山並みを眺めながら早い昼食。防寒着を纏う、暫し晩秋の静寂のひと時。下山は往路を折り返す。寂しく「アザミの歌」を唄いながら下ると、平日にも拘わらず、６,７人の青壮年男性グループと１５人程の中高年グループが登ってくる。予報に反して雲も広がりだし、犬越路から日陰沢を駆け下り神ノ川に下山。帰路、道志川縁りにある青根「いやしの湯」の露天風呂で汗を流す。陽射しも高い、紅葉も鮮やか、贅沢な気分。晩秋の丹沢・大室山を堪能した。

6：05　自宅発⇒6：43　立川発JR⇒8：00　笹子駅着→8：40　南稜登山口→11：05　滝子山山頂　昼食　11：50　下山開始→13：10　曲り沢峠分岐→14：30　笹子駅下山　15：02　笹子発⇒17：15　帰宅


南陵尾根の紅葉


大谷ヶ丸


カエデ紅葉


赤岩の滝

数年前の小金沢連嶺、その可憐な美しさに感動したミネカエデの花。今回は紅葉を求め、裂石から石丸峠を廻って湯の沢峠に下る大周遊を計画する。石段脇に石仏が佇む雲峰寺に挨拶し、林道から芦倉沢の橋を渡り山道を登るとブナやカエデの紅葉が鮮やか。登山者と車で混雑する上日川峠から一旦下り、緑鮮やかな笹が茂る落葉松林、黄色く色付き青空に映える。梢越しに大菩薩嶺の山並を振返りながら急斜面をゆっくり登る。ススキがなびく鞍部からはゆったりと構える小金沢山が現れる。昨年、黒岳と誤った。樹林を抜け、笹原が広がる石丸峠で雲間から頭を覗かせる富士山を眺めながら、裂石の茶屋で求めた蓬餅を食べていると、上日川峠まで前後しながら進んだ「牛の寝通りから小菅に向かう」という女性が熊沢山を下ってきた。大菩薩峠を越える当方と違うルートの様であるが健脚振りに驚く。分岐を南下すると西の雲上に南アルプスの山々が浮かび、辿ってきた落葉松林の山並が柔らかい。小さなピークの天狗棚山から望む小金沢連嶺はガスが流れゆったりと畝り針葉樹林が青い。笹が広がる狼平からシラビソの根と岩の北斜面を登る。山名を誤ったにも関わらず優しく迎えてくれた今山行の最高地点／小金沢山。「大滝から牛の寝を越えてきた」御夫婦は日溜まりで昼食中。草々に下山。見覚えあるミネカエデの花と出逢った笹原、残念ながら紅葉の時期を逸した様だ。牛奥ノ雁ヶ腹摺山で黒岳を眺めながら、久し振りの鳥牛蒡おにぎり。雲に隠れた富士山、諦めて山頂を辞す。オヤマボクチの花殻が並ぶ笹原、コメツガ林から賽の河原に下る。登り返す胡桃沢の頭からシラビソの苔むした原生林を進み、展望の効かない黒岳に辿り着く。「大月の遅能登から雁が腹摺山を越えてきた」男性、先は当方と同ルートの様だ。下った白谷丸はガスが流れ、スゲがなびき暫しの休眠中。登りで会った女性から「大蔵高丸の先から尾根道がある」と教えられたが、地図で調べると1時間程余計に掛かり、今回は予定通り湯の沢峠から焼山沢を下る。ハンノキの先に広がる紅葉の山並に見とれながらツルリンドウが咲く長い林道を下り、暮れ泥む天目山温泉に下山。肌がつるつるする温泉に浸かり長旅の疲れを癒す。今ルートの地図上歩程は８時間強。晴天に裾野を広げる秀麗富士、ミネカエデの紅葉以外はほぼ計画通り。深まる秋、歩きごたえのある、変化に富んだ山旅を楽しんだ。

武尊牧場のリフト


三合平のシラカバ林

ツルリンドウ（Y子の携帯写真）

紅葉の林を南下すると沢音が聞こえはじめる。春に逆コースを進み、橋がなく前進を躊躇し引き返した江戸沢。今回は石伝いに何とか徒渉。登り返した東屋。春には雪渓の見事な山容を見せた武尊山は残念ながら雲の中。草倉沢に沿って黄土色に色付き始めた落葉松林を下る。武尊自然遊歩道は歩程約１０キロ。急な登りはないが予想以上に長く、最後はリフトの終了時刻が迫り急ぎ足。帰路、道の駅／川場田園プラザで野菜やきのこ、地酒を土産に帰宅。先週の金峰山とは一味違う、広葉樹林の柔らかな紅葉。家族と共に忍び寄る秋を楽しんだ。

体育の日の連休。中秋の名月の名残り、十六夜（いざよい）の月が空に残る未明、奥秩父の金峰山へ紅葉を求めて向かう。陽も昇り始めた塩山の恵林寺で朝食。肌寒い。琴川に沿って川上牧丘林道を遡り、月に導かれるように高度を上げていくと落葉松林は黄土色に色付き始める。突然キツネが現れびっくり。月が煌々と輝き、満天に星も瞬いていたのに、何と山の上から雲が流れはじめる。車のガラスが白く曇り、外気温を見ると何と４℃。大弛峠から登山口へ向かうが余りの強風と寒さ、一旦車に引き返し様子を見るが天候は好転しそうもないので、ウインドブレーカー、手袋を付け再出発。苔むしたシラビソ林を進むと草紅葉は黄色く、ナナカマドは赤い葉が鮮やか。風のざわつく緩やかな尾根を進み、朝日岳を下ると流れる白いガスの中から緑の針葉樹に白い霧氷が付着した黄色と赤の紅葉の山並が現れる。始めて眼にする神秘的な風景。ぬかるむ林を進むと霧氷が風に飛ばされパラパラと苔に落ちる。既に来年の花芽を付けるシャクナゲの間を抜け、ハイマツの尾根に出る。遮るものがなく強風に押されて進めず、暫く岩陰にビバーク。帽子を飛ばされない様にバンダナで頬かぶりし、ケルンも並ぶ砂地を進むと雲が流れ、辿ってきた朝日岳方面が現れる。緑に白い樹氷の黄葉が浮かび、この世のものとは思われない美しさ。西に瑞牆山の岩山を低く見ながら、小さなナナカマドに咲く氷の花に迎えられて大きな岩を飛び越える。岩のトンネルを抜けると山頂に至る。凍り付いた五丈岩の陰で冷たい手をポケットに突っ込みながらコーヒーを喫する。風を避けて座る大きな岩のテーブル、眼前に広がる雄大な風景。五丈岩、富士山、辿ってきた朝日岳から北奥千丈岳へと紅葉の山並が連なる。流れる雲、刻々と替わる風景。名残りを惜しんで山頂を辞す。

初冠雪の富士山